放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

15 放射線障害からの回復

 細胞は放射線による障害から回復する能力を持っています。回復の概念は次の二つに分けられます。

(1)亜致死(SLD)損傷からの回復(エルカインド回復)

図11 亜致死 (SLD) 損傷からの回復
図11 亜致死 (SLD) 損傷からの回復

 1回照射と1回照射と同じ線量を分割して照射した場合、細胞致死効果が異なり、分割照射した場合は1回照射の時よりも生存率が高くなります。この現象を亜致死損傷からの回復と呼んでいます。

 例えば、3標的の細胞のそれぞれすべてに放射線がヒットした場合、増殖死に陥ります。一方、2つの標的のみに放射線がヒットした場合には、ある一定の時間後、ヒットした損傷が修復され完全に戻ったとすれば、2回目の放射線を受けた時はヒットを受けていない細胞と同様に振る舞います。このように、分割照射では損傷から回復する細胞があるため生存率は上昇すると考えられています。

(2)潜在性致死(PLD)損傷からの回復

 細胞を照射後、しばらくの間いろいろな条件下におくと生存率が上昇することがあります。この現象を、潜在的致死損傷(致死をもたらすはずであった損傷)からの回復と呼んでいます。細胞同士が密に接していて分裂がゆっくりと進んでいる状態では、この回復が起きやすいと考えられています。

図12 潜在性致死 (PLD) 損傷からの回復
図12 潜在性致死 (PLD) 損傷からの回復


Go Back  1/1  Go Next