放射線防護技術編
参考資料
1.放射線生物学 参考ムービーはこちら

20 全身に放射線照射された時の影響

 放射線が全身に照射された時にもさまざまな症状が出ます。まず、全身照射された時に2〜3カ月以内に起こる障害を急性障害と言います。この急性障害で問題となるのは、事故などによって全身被ばくした時の放射線急性死です。

 放射線急性死には大きく四つ、1)骨髄死、2)胃腸死、3)中枢神経死、4)分子死に分けられています。

 骨髄死は2〜10Gy の線量を受けた時、30日以内に大半が骨髄障害で死亡します。造血機構の障害をきたし、血球減少症が起こり、これに伴い感染症も合併し、出血により死亡します。しかし、この程度の線量であれば輸血などの対症療法で治療は可能であり、適切な治療で大半が治癒します。

 胃腸死は10〜50Gy の線量を被ばくした時、3〜14日程度の潜伏期間を経て、強い胃腸障害の症状を示し死亡します。症状は食欲不振、激しい下痢(血便など)、発熱などです。高線量 の場合には、治療は難しく多くは死亡します。

表2 ヒトにおける全身照射、線量区分、症状、治療及び転帰
表2 ヒトにおける全身照射、線量区分、症状、治療及び転帰

 中枢神経死は100Gy 以上の線量を被ばくした時、2日以内に脳血管系の障害で死亡します。症状としては痙攣、振せんなどです。

 さらに高い線量、1000Gy 以上では即死します。これは全身の細胞が急速に機能不全となり、分子死と呼ばれています。


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