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2 測定器の種類と原理
(4)固体の電離作用を利用した測定
ア 半導体検出器
放射線が固体内に入射すると、電離作用により電子と正孔(ホール)が生成されます。放射線が気体を電離し、電子と陽イオンを生成するのに似ています。このように、固体内での電離を利用した検出器が半導体検出器です。図9のように、P 型半導体とN 型半導体を接合し、N型に正、P 型に負の電圧を加えると、接合部には、電子も正孔(ホール)もない電界の掛かった空乏層ができあがります。この部分に放射線が入射し、半導体物質を電離し、電子と正孔(ホール)が出来ると電子はP 層側に、正孔(ホール)はN 層側に移動します。この時両層の電極側にパルスが発生します。
あたかも気体電離箱と同様な動きをするので、半導体検出器は固体電離箱とも呼ばれています。原子をイオン化するためのエネルギーをW 値と言いますが、空気のW 値が約34eV なのに対して、半導体では約3eV と、1/10のエネルギーで、さらに固体なので密度は気体の1000
倍です。したがって、同じエネルギーの放射線が入射した場合、出力される信号の大きさは、半導体の方が遙かに大きく、高感度の測定器を作ることが出来ます。
(5)写真作用を利用した測定
ア フィルム
写真フィルムの乳剤が、放射線によって黒化する作用を利用した検出器です。フィルムバッジ、非破壊検査の透過写真などが主な用途です。
写真乳剤中の臭化銀粒子(AgBr)のうち、放射線の電離作用によって生じた電子が銀イオンを還元し、潜像核を作ります。この潜像核を持った乳剤を現像すると、潜像核の周りに銀が析出し黒化します。フィルムの黒化は、写真濃度と呼ばれます。
フィルムに入射した光の強さをI0、フィルムを透過した光の強さをI とすれば、写真濃度Dは、D = Log10(I0/I)と定義されます。すなわち、濃度1は透過光量が入射光量の1/10になった時を表わします。
放射線の入射量と乳剤の黒化濃度には比例関係が成り立つので、写真濃度を測定すれば、濃度から放射線量を求めることが出来るようになります。写真濃度は、入射放射線のエネルギーに大きく依存します。濃度が同じでも放射線のエネルギーが異なると、入射線量が異なることになります。求める放射線のエネルギー情報がなければ、正しい線量を求めることはできません。したがって、一部の積算型の線量計では、数種類のフィルターを通してその反応の違いから入射エネルギーを推定できるようにしています。 |
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