放射線防護技術編
参考資料
5. 事故等の発生に伴う措置 参考ムービーはこちら

1 X線装置に伴うトラブルや不具合事例

 X 線管は、X 線を照射する陽極と、熱電子を発生させる陰極を、高真空状にした容器に封入した真空管の一種です。ターゲットとなる陽極には、主に熱容量の高いタングステンが用いられます。X 線管は、X 線を出し続けるような長い負荷をかけると、発熱量が大きいためターゲットが溶解するおそれがあるので、水や油等で冷却しています。ターゲットの溶解はX 線管にとって最も致命的な状態ですが、X 線の発生もできなくなるので被ばく事故には結びつきません。また、X 線管の陽極には、電子の衝突面積を大きくするため、高速に回転する方式(回転陽極)のものがありますが、経年使用によって回転軸がずれたり、ベアリングの歪みなどから異音を発することがあります。そのまま使い続けると、X 線管壁がガラスで出来ている場合、陽極の溶融や陽極の軸が曲がるなどして、X 線管そのものが破壊される場合があります。大きな事故や故障を防ぐためには、このような日常の小さな変化を察知することが重要です。
        
図1 X 線管のガラスの損傷
*: X 線管のガラスが熱変性等で損傷しています。X 線管内は高真空なため徐々に真空度が下がり、放電状態に陥ります。

図1 X 線管のガラスの損傷

        
図2 加速電子衝突部分表面の変化
*: 加速電子が衝突する部分が溶けて表面が荒れています。こうなると正常なX 線出力を得られなくなります。

図2 加速電子衝突部分表面の変化

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