■X線装置に関する放射線防護  
1.基本事項  
■ラジカルの発生・水分子から発生する様々のラジカル
 

放射線による水分子の反応
1)ラジカルの発生
生物体には必ず水が含まれており,しかもその量は多量であり,およそ80%にも達します。したがって,放射線の生物作用には水との相互作用が重要な意味を持つことが分かっています。 特に放射線が水と反応したときに生成されるフリーラジカル(活性遊離基)が生体に大きな影響をもたらします。通常の分子は共有結合をすることにより安定していますが。このうち1個の電子を失い,不対電子となると分子は不安定になり,非常に化学的な反応性に富むようになります。この不対電子をもつ化学種は活性が強いのでラジカルと呼ばれます。
2)水分子から発生する様々のラジカル
水分子は放射線によって励起されます。励起された水分子の状態についてはまだ十分に分かっていませんが,この分子が分解してラジカルが生成されると考えられています。 ここで,不対電子を持つラジカルを“・”を付けて表現します。 まず,放射線によって最も多く起こる反応は水の電離(イオン化)です。
H2O→・H2O++e-
・H2O+は非常に不安定であるので,短時間で
・H2O+→H++・OH または・H2O++ H2O→H3O++・OH となり
・OHラジカルが生成します。
・OHラジカルは,比較的長時間液中を浮游して,強い酸化剤として作用します。 また,電子 e-は多数の水分子と反応し, e-のまわりに水分子の正電荷部分が囲むように配列した水和電子が生成され,これも比較的長時間液中を浮游します。水和電子は強い還元剤として作用します。 この反応性の強いラジカルや水和電子が,生体分子,特に核酸のDNAなどに重大な傷害を与えます。