放射線防護技術編
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参考資料
3. 放射線の測定

1. 届出等について

Q .1−1 装置等の届出は、診療施設の開設と同様に設置後10日以内で良いのでしょうか?
  @. 診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用放射線照射装置、又は放射性同位元素装備診療機器の届出を備えた場合は、「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」(以下、放射線障害防止法)の規定に基づき使用の許可等を受けなければならないため、先に、放射線障害防止法の手続きを行います。使用の許可を受けた後は獣医療法施行規則上10日以内に所在地を管轄する都道府県知事に同規則に定められた事項を届け出ることが必要です。(ただし、実際にはCの立入検査があるため、使用開始の前に届出を行うこととなります。)
A. 診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を診療施設に備えた場合には、施設の使用を開始する前に所在地を管轄する都道府県知事に届出を行うよう指導されています。
B. エックス線装置は、設置後10日以内に届け出ることに変更ありません。
C. @及びAの場合は、施設に対し、獣医療法第8条に基づく立入検査を受け、適切な放射線防護措置及び安全管理体制が講じられていることが確認されなければなりません。
Q .1−2 今回の改正でエックス線装置以外に多くの装置などが使用できるようになりましたが、具体的な装置の名前を教えてください。
  @. 診療用高エネルギー放射線発生装置(第1条第1項7号)とは、1メガ電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線又はエックス線の発生装置で、ほとんどは放射線治療に用いられるリニアック装置(ライナック装置)と呼ばれているものです。
A. 診療用放射線照射装置(第1条第1項第8号)とは、密封された放射性同位元素で、核種ごとに下限数量が決められており、下限数量の1,000倍を超えるものとされ、放射線治療に用いられるガンマナイフ装置、ラルス装置、核医学診断に用いられる吸収補正用線源、と呼ばれるものがあります。
B. 診療用放射線照射器具(第1条第1項第9号)とは、密封された放射性同位元素で、核種ごとに下限数量が決められており、下限数量の1,000倍以下のものとされ、前立腺がんの治療に使われるヨードシーズ、機器校正用の線源などがあります。上記の装置との違いは、使用目的等で分けられているのではなく、線源の大きさのみで規定されています
C. 放射性同位元素装備診療機器(第1条第1項第10号)とは、密封された同位元素を装備する機器で、ガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ、骨塩定量装置、血液照射装置の3種類が現在農林水産大臣の告示で指定されています。
v. 診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素(第1条第1項第11号)とは、薬事法上で製造販売の承認がされた非密封の放射性同位元素を含む医薬品で、主に核医学検査に使用されます。陽電子断層撮影診療用放射性同位元素には、今のところ唯一FDG(フルオロデオキシグルコース)と呼ばれるPET検査薬があります。
Q .1−3 必要な届出書は、どこで入手できますか?
  獣医療法上、定められた届出用紙(様式)はありません。各都道府県獣医事担当部署に相談して下さい。
Q .1−4 すでに、放射線障害防止法下で装置等を使用している場合も、新たに届出が必要でしょうか?その場合、必要なものを具体的に教えてください。また、それはいつまでにしなければならないのでしょうか?
  今回、獣医療法の規制対象にもなるため、施設の変更があったものとして届け出る必要があります。改正施行規則の施行後1ヶ月以内に提出してください。
Q .1−5 診療用放射線照射器具、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の届出事項で、その年に使用を予定する・・・とありますが、その年とは、いつからですか(1/1又は4/1、あるいは、届出する日から)?特に指定はないのでしょうか?
  被ばく防止のための実効線量、等価線量は4/1を始期とする1年間を基準としているため基本的には4/1からの1年間と考えます。

2. 診療用放射線の防護について(施設等について)

Q .2−1 エックス線診療室等の放射線取扱施設の標識について、特別に指定されたものがあるのでしょうか?
  獣医療法上は特別に指定されたものではありません。しかしながら、放射線障害防止法上は診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具又は放射性同位元素装備診療機器の使用室において、放射線障害防止法に規定された標識が必要となります。これは、大きさ等も指定されています。
Q .2−2 「人が常時立ち入る場所」とは、どこですか?
  放射線診療従事者等が、管理区域に立ち入り、長く過ごす場所で、操作室、診療室、収容室等が一般的です。
Q .2−3 診療用放射性同位元素使用室に、何台かのガンマカメラを設置しても良いのでしょうか?陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室ではどうでしょうか?
  診療用放射性同位元素については、エネルギー(放射線の強さ)が低く、放射線診療従事者等の被ばく線量が小さいため、2台以上のガンマカメラを1室設置することは出来ますが、放射線診療従事者等の移動及び受診動物の運び込み等に対し十分な距離をとるなど余裕ある配置が必要です。陽電子断層撮影診療用放射性同位元素については、エネルギーが高く、放射線診療従事者等の被ばく線量が大きくなるため、1室に1台とされています。また、操作室も別に設けることとされています。
Q .2−4 診療用放射性同位元素使用室に、操作室を設けても良いのでしょうか?
  操作室を設けることは、なんら規制されません。
Q .2−5 「放射線同位元素による汚染の検査に必要な放射線測定器、放射性同位元素による汚染の除去に必要な機材及び洗浄設備」を設けることとなっていますが、具体的にどのようなものを準備するのか教えてください。
  放射線測定器として代表的なものはGMサーベイメータです。汚染の除去にひつような機材として、市販の除染剤(洗浄剤2%過酸化水素水等)、吸収紙、トングやピンセット、ポリエチレンシート、テープ、マジックなどです。洗浄設備は、シャワー室を備えればよいです。← 洗浄設備はシャワーのみとなっているので、書き分けが必要。
Q .2−6 上記の続きに「更衣設備を設けること」となっていますが、男性用・女性用の更衣室が必要でしょうか?
  更衣室の設置は必ずしも必要ありません。汚染された衣服で管理区域の外へ出ないよう出入口付近に専用白衣を掛けて、保管できれば良いでしょう。
Q .2−7 貯蔵室は必須でしょうか?鉛の貯蔵金庫であれば、それだけで貯蔵施設とみなしてよいのでしょうか?
  獣医療法では、貯蔵施設は、貯蔵室又は貯蔵箱となっており、また、貯蔵容器を備えることとなっています。鉛の貯蔵金庫であれば、貯蔵容器としてのしゃへい効果(最大貯蔵予定数量で確認する必要はありますが)もあり、貯蔵施設とみなせます。

3.診療用放射線の防護について(放射線障害の防止に関連して)

Q .3−1 リニアック装置(診療用高エネルギー放射線発生装置)を使用しており、放射線取扱主任者に診療放射線技師を選任している場合、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用開始するときに、第1種放射線取扱主任者免状を有する獣医師を配置しなければならないのでしょうか?配置しなければならないならば、取扱主任者を変更する必要があるのでしょうか?
  放射線障害の防止について監督を行う者として、第1種放射線取扱主任者免状を有する獣医師を配置するのが望ましいです。ただし、放射線取扱主任者を変更するまでの必要はありません。
Q .3−2 診療用放射性同位元素又は、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する場合、新しく放射線障害の予防のための規程を作成する必要があるようですが、見本のようなものはありますか?
  日本獣医学会からいくつかのガイドラインが提案されています。それを参考に自施設にあったものを作成してください。
Q .3−3 診療用放射性同位元素又は、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備える場合、獣医師に初めて診療を行う前、及び3年ごとに研修を受けるとされていますが、どこで研修を受ければよいのでしょうか?
  日本獣医学会が主体となり研修会が開催される予定です。
Q .3−4 エックス線装置のみを備えた施設でも、獣医師は3年ごとに研修を受けなければいけなくなるのでしょうか?
  必要ありません。研修の対象となるのは、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する獣医師であり、施設の管理者が該当する獣医師に研修を受けさせなければなりません。
Q .3−5 放射線診療従事者等の教育訓練は、院内で行えばよいのでしょうか?どこか研修をしているようなところがあるのでしょうか?
  行為内容に応じて、初めて管理区域に立ち入る前、及び1年に1回は教育訓練が必要です。ただし、放射線の人体に与える影響、放射線防護に関する関連法規、装置等の安全な取扱い、放射線障害の予防のための規程に十分な知識及び技能を持つ者は省略できるとされています。
Q .3−6 エックス線装置のみを使用している場合、使用場所の制限は今までと同じと考えてよいのでしょうか?
  今までと変わりません。
Q .3−7 エックス線装置をエックス線装診療室以外で使用する特別な理由とは何か教えてください。その場合の適切な防護措置についても教えてください。
  しゃへい壁その他のしゃへい物の外側における1センチメートル線量当量率が20マイクロシーベルト毎時を超えないようにしゃへいされた状態でエックス線装置を使用する場合。エックス線装置を移動させて使用しなければならない場合。その他エックス線装置をエックス線診療室において使用することが著しく使用の目的を妨げ、若しくは業務の性質上困難である場合。これらについては、今までと変わりません。特別な理由とは、
@. 診療用高エネルギー放射線発生装置又は診療用放射線照射装置により、放射線を体外照射すべき部位を決定するためにエックス線装置を使用する場合。
A. 診療用放射線照射装置又は診療用照射器具を飼育動物の体内に挿入すべき部位を決定するためにエックス線装置を使用する場合。
B. 診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与された飼育動物の画像診断の精度を高めるため、CT装置によるエックス線撮影を核医学撮像装置の吸収補正用として使用する場合。
C. 診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与された飼育動物の核医学画像との重ね合わせのためにCT撮影を行う場合。
v. 核医学画像及び陽電子断層撮影画像を得ることを目的とせず、CT撮影画像のみを得るために、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与されていない飼育動物に対して、SPECT−CT複合装置若しくは陽電子−CT複合撮影によるエックス線撮影を行う場合。
防護措置とは、それぞれの装置等の放射線防護のほか、エックス線による放射線診療従事者等の被ばくを低減するため、防護衝立、防護スクリーン等のしゃへい物を設ける等、適切な放射線の防護措置を講じ、放射線診療従事者等が不要な被ばくを受けることがないよう、適切な放射線防護の体制をとる必要があります。
Q .3−8 診療用放射性同位元素等の廃棄の委託で、農林水産大臣が指定するものに委託できるとなっていますが、指定されたものを教えてください。
  現時点では、指定を受けた機関等はありません。
Q .3−9 診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与された飼育動物を退出させることが出来る農林水産大臣の定める基準を教えてください。
  今回の改正で、以下の3種類に限定され、退出の基準が示されました。
@. 馬のTc-99m骨シンチグラム検査について、投与されてから48時間以上経過していること。
A. 犬と猫のTc-99m各種シンチグラム検査について、投与量が150MBq以下の場合24時間、150MBqを超える場合48時間以上経過していること。
B. 犬と猫のF-18陽電子断層撮影検査(FDG-PET)について、投与されてから24時間以上経過していること。

4.診療用放射線の防護について

Q .4−1 放射線診療従事者等とは、どのような人が含まれますか?
  エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具、放射性同位元素装備診療機器、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事する者であり、管理区域に立ち入るものです。具体的には、放射線診療に従事する獣医師、診療補助者、放射性同位元素で汚染された物の清掃を専任で行う者等が想定されます。
Q .4−2 女性の放射線診療従事者等で妊娠の意思がない旨を診療施設の管理者に書面で申し出たものの取扱いはどうしたらよいですか?男性と同様に取り扱ってよいのでしょうか?
  施行規則では、妊娠の意思がない旨を診療施設の管理者に書面で申し出た女性は、男性と同様に管理されることになりますが、電離放射線障害防止規則(電離則)、人事院規則では、妊娠する可能性がないと診断されたもののみ、男性と同様に管理されることになります。従って、書面だけの申し出については、女性とみなして取り扱うべきです。
Q .4−3 健康診断の項目はありませんが、管理者は、放射線診療従事者等に健康診断を受けさせなくて良いのでしょうか?
  電離則・人事院規則の規定により健康診断を受けなければなりません。
Q .4−4 個人線量計はどの人に持たせればよいでしょうか?またどこに着用したらよいでしょうか?
  管理区域に立ち入る人全てに持たせましょう。1週間に100μSvを超えるおそれのある場合は、線量を測定する必要があります。均等被ばくと考えられる場合、男性は胸部、女性は腹部に、局所被ばくが予想される場合は、その領域につけてください。防護衣を着用する場合は、防護衣の内側につけましょう。

5.診療用放射線の防護について(測定に関して)

Q .5−1 エックス線装置についても、6月を超えない期間ごとに1回以上線量計で測定しなければならなくなりましたが、簡単に測定できる方法を教えてください。
  経年変化のよる線量の変動を確認し、部品の交換時期や装置の修理を判断する上でも重要です。寝台上に電離箱式線量計を置き、通常の条件で測定します。
Q .5−2 排水監視設備、排気監視設備にモニタがついている場合、それを保管することで記録の代わりになるのでしょうか?
  排水について、排水のつど排水の濃度限度以下として排水し、その記録を残している(モニタの出力帳票で可)施設は、それが排水記録になります。排気に関しては、3月間の最大使用予定数量を排気中の放射性同位元素濃度算出に用いるため、3月間毎に実際の使用数量から計算して核種毎の平均濃度及び排気の濃度限度との比を算出し評価します。

6.その他

Q .6−1 事故の場合の措置で、今回警察署、消防署その他関連機関に報告となりましたがどうしてですか?何を報告するのですか?
  事故等による放射線障害の発生又は放射線障害のおそれがある場合は、診療施設のみならず周辺社会に与える影響が大きいことから、警察署、消防署その他の関連機関に報告することとしています。事故等の状況を連絡しますが、特に消防署に対しては、都道府県の火災予防条例に診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する場合、「核燃料物質等の貯蔵、取扱いの届出」を要求される場合がありますので注意して下さい。
Q .6−2 地震発生後、特に報告する義務はありますか?震度による基準などはあるのでしょうか?また、その場合どこに何を報告すればよいのでしょうか?
  地震、火災、その他の災害が起こったことにより、放射線障害が発生し、応急の措置を講じた場合は、応急の措置を直ちに講じた後、直ちに文部科学省に通報します。
放射線障害防止法の適用を受ける施設で貯蔵能力が密封線源で10PBq(ペタベクレル)又は、非密封線源下限数量の千万倍以上の能力を有する施設は、震度4以上で「点検の結果異常のない旨」等を報告しなければなりません。


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