放射線防護技術編
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参考資料
3. 放射線の測定

放射線防護

Q .1 放射線防護に関して主な責任を持っているのは誰か
  現行の獣医療法では、開設者及び開設者が指名した管理者に主な責任がある。
管理者は、安全管理の責任者である獣医師に放射線防護全般に対する責任を分担させること。
管理者は、診療従事者及び診療補助者が適切な訓練を受け、かつ適切に防護され、手順書に基づいて実施されていることを、徹底させなければならない。
管理者は放射線防護に関わる規則を定め、院内で安全文化を構築し、全員が関心を持つように啓発すること。
管理者は院内規則や放射線障害防止規程を定め、徹底すること。
Q .2 核医学を担当する獣医師の責任は何か
  診療従事者のみならず、飼育動物の放射線防護を徹底すること。
院内規則に定められたガイダンスレベルを考慮し、本来の目的を達成できる範囲内で、診療従事者や飼育動物の被ばく線量を最小限に抑えること。
安全管理の責任者と相談し、診断手順に関する最適化されたプロトコルを確立すること。
妊娠中の女性診療従事者や学生を管理するための基準を作成すること。
獣医学的な見地から、全ての放射線事象や事故時の評価を行うこと。
放射線計測器やガンマカメラ装置の品質管理を実施すること。
事故や不具合の事象が発生した場合には、安全管理の責任へ報告すること。
投与する放射性医薬品及びその放射能の量を確認すること
設備のコミション試験を実施すること
設備の保守点検を実施すること
Q .3 核医学を担当する診療補助者の責任は何か
  飼育動物の識別
飼育動物の世話をする飼い主への通知。
飼育動物が妊娠していないかを、確認する。

PET/CT装置の放射線防護

Q .1 PET/CTからの線量を、他の検査による線量と比較したいが
  PET/CTには、PETスキャンとCTスキャンの2つの要素があり、ほぼ同時に施行される。人のCTスキャンからの被ばくは、部位や検査目的により異なるが、一般的な場合は全身検査でも実効線量で7mSv、しかし高分解能では最大30mSvである。
PETスキャンの場合は、FDGの投与量にもよるが、400MBqを投与した場合には成人の実効線量は8mSvである。
Q .2 同じ飼育動物に繰り返し検査をした場合、放射線リスクは増大するか
  増大する。しかし体内の修復メカニズムは実に活発で、適切な時間間隔をあけて実施すれば、放射線による影響を低減できる。飼育動物の便益のために、飼育者は従前に受けたPET検査を全ての獣医師へ伝えるべきである。
Q .3 PET/CT検査を受けた同日に、CT検査、エックス線検査、又はMRI検査を実施するのは可能か
  PETスキャンが、これらの検査に影響を与えることはない。しかし、他の画像診断を計画している場合には関与する全ての獣医師が、飼育動物に実施した画像診断を承知しているように徹底し、検査の不必要な重複を避けなければならない。
基本的には、PETスキャンを実施する前に、CT検査やMRI検査及び一般的な血液検査等を終了しておくべきである。
Q .4 妊娠中の女性が、飼育動物に付き添うことが、可能か
  望ましくない。スキャンを受けた飼育動物からは極微量であるが、胎児への放射線被ばくは合理的に達成できる範囲内で、できるだけ抑えることが望ましい。 飼育動物を安心させるために妊娠中の女性を立ち会わせる場合には、飼育動物との距離と時間についてPETスキャン時に具体的な指示事項等助言を行うべきである。
Q .5 妊娠初期の放射線診療従事者が、PET/CTを行っている飼育動物から被ばくを受けた場合どうなるか
  深刻な被ばくリスクはない。詳しくはIAEAのBSS 9項「核医学における妊娠と放射線防護」を参照すること。
Q .6 退出後の飼育動物からの一般公衆への被ばくはどうか
  我国の退出基準は保守的な評価方法により、一行為で10μSvを担保しているため、公共の交通手段を利用した場合でも、他の乗客、妊娠している女性、及び子供に対して危険はない。ただし、空港等の特定な場所の放射線検出器が、作動してしまうことがあるかも知れない(ほとんどない)。このような場合を想定した検査を受けた文書を飼い主に指示しておくことも進められる。
Q .7 退出後の飼育動物の行動を、制限する必要があるか
  放射性審議会においても、退出後に飼育動物の体内及び排尿に関しても評価され、特別に行動を規制する指示事項を出す必要がないことが確認されている。
Q .8 PET/CT検査を受けた飼育動物の介助をしている診療補助者の放射線リスクはどうか
  飼育動物の看護をする診療補助者に深刻なリスクはない。しかし、PET/CT検査を受けた飼育動物は、放射線被ばくを増大させることになる。飼育動物に接触する時間を減らし、飼育動物との距離を保つ手順書に従えば、診療補助者への被ばくは最小限に抑えることができる。汚染には十分注意すること。
Q .9 麻酔医等の診療に関与しない職員への放射線リスクはあるか
  PET/CT検査を受けた飼育動物に接触する機会があまりない職員に対して、限定的な助言を行う必要はない。飼育動物に接触する時間を減らし、飼育動物との距離を保持する等の一般原則を適用するだけでよい。
Q .10 PET/CTに関与する診療従事者は、どのような訓練要件を満たせばよいか
  獣医療法施行規則に記述された研修要件に従うべきである。
法令に記述された教育訓練要件は、PET/CT検査を施行する前に研修を受け、そして継続教育を3年に1度受けることが義務付けられている。
また、放射線診療に従事する診療従事者は、管理者が定めた教育プログラムに従って、年に1度放射線防護を含めた研修を実施することが法令で義務付けられている。

外照射療法における放射線安全

  最適化

Q .1 外照射療法の安全な臨床診療上で、必要な精度レベルは
  非常に高いレベルが必要である。優良な診療及び装置の性能として容認される範囲は、処方された吸収線量を所定のビーム線量の質で、計画された標的体積に投与されるべきであり、それ以外の組織・臓器に対する線量は最小限に抑制されるべきである。
線量を、1%変更した場合の腫瘍管理や正常組織・臓器の損傷に対する反応の変化率考えてみると、その数値は不確かで、モニタしている腫瘍部位や正常組織・臓器の応答を左右する。線量を1%低減した場合の腫瘍管理の可能性は、0.5〜5.0%の範囲で減少が示されており、対して正常組織・臓器の合併症は2〜3%と言う値が出ている。
Q .2 外照射療法で、標的体積を安全に最適化するにはどうしたらよいか
  治療上の全てのジオメトリックな変化を特定して定量化することである。また、変化を低減し、考慮に入れること。
外照射治療が決断された場合には、標的体積を最適化されるべきであり、最適化の過程は治療を精度高く実施する際に不可欠である。
最適化の過程は、計画された標的体積(PTV)と一つ又は複数のリスク臓器の計画体積(PRV)を作成することにより、治療時にリスクに曝される臓器・組織のジオメトリックな変化を考慮すること。あらゆる過程におけるジオメトリックな変化(臓器の動き、飼育動物の設定変化など)は、高線量エネルギー照射を必要とする組織・臓器体積周辺のマージンの大きさに必ず影響する。このような変化の定量化は、正確で、安全なマージンを作成するために必要である。
最近の原体照射では、治療体積(CTV)とPTVを一致させるだけでなく、PTVと臨床標的体積の一致、及び臨床標的体積と肉眼的腫瘍体積(GTV)の一致も目視すべきである。このような要素を理解し、腫瘍細胞が確実に治療体積に含まれるように、全体的なマージンに対する変化要因を統合する必要がある。
Q .3 外照射療法における品質管理には、どのように取り組むべきか
  品質管理に関する学会や製造者の仕様書、及び国際的なガイドラインを学び、それに従うこと。
国際標準化機構(ISO)では、品質管理は実際の品質性能を測定、既存の基準と比較し、基準の適合を維持するために必要な措置を講じる規制過程であると定義している。放射線治療では装置の性能管理に加えて、治療過程の性能管理も重要である。
実務管理のための方法や時期は、学会や国際団体及び製造者の仕様書を参考に当該病院に適した運用を見つけることである。
新しい治療装置は臨床に使用する前に、受入試験やコミショニング試験を実施すること。このデータを日常品質管理の確認のために使用する。
IAEAは、放射線治療の線量測定における国内プログラム設定(IAEA TECDOC1040)や品質管理の物理的及び技術的側面(IAEA TRS 430)に関するガイドラインを勧告している。
Q .4 当院における1Gyは、他の施設の1Gyと同じか
  国内及び国際的な枠組みで確立されたプロトコルに従って、吸収線量を測定することで確認すべきである。
施設が異なっても吸収線量は等しいこと、物理学の専門家が確立されたプロトコルに従って吸収線量を測定する必要がある。
線量の品質監査及びトレーサビリティプログラムは、線量測定に持続的な一貫性を持たせるために強力な手段である。IAEA/WHOは、放射線治療を行う病院での投与線量に対し、独立した品質監査を提供している。

  偶発的な被ばくの防止

Q .5 当院で事故が起こるリスクを最小限に阻止するためには何が必要か
  手始めに過去の事故事例から学ぶ
様々な事故事例から学ぶべき教訓は、一般的な結論を示している。
細部に対する注意や警戒、又は認識不足の場合は、診療従事者が気の散りやすい環境で、作業をしている。
手順や保守点検が不十分な場合、包括されていない場合、文書化されていない場合、十分に実施されていない場合等がある。
専門的な診療従事者が不足している場合。
命令系統が不透明な場合、安全に関わる重要な任務が十分に保証されない可能性がある。
助言文章は、IAEA SRS17, ICRP No86等がある。
Q .6 他施設で起きた外照射療法の事故を教訓にする価値があるか
  十分にある。情報資源は自由に利用できる。
事故原因や状況に関わる知識を効率的に得る方法は、事故による被ばく調査が、無料でダウンロードできる。また、IAEAの報告書を読むこと。
Q .7 当院の飼育動物に過剰被ばくによる症状が表れない限り、我々には問題ないか
  残念ながら、症状が無くとも、全ての飼育動物が計画通りの治療を受けているとは言いきれない。
過剰被ばくによる深刻な症状は、治療を修正する措置を講じるには手遅れである場合に限って現れるおそれがある。
照射不足では、何年か経過してから飼育動物集団における治癒率低下が示される結果になると予想される。
Q .8 重大な事故は極めて稀である。より一般的な小規模の事象にはどのように対処するべきか
  放射線治療において小さな事象をモニタし、重大な事故として取り組むべきである。
   


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