放射線防護技術編
▲ メニューへ戻る
参考資料
5. 事故等の発生に伴う措置

(3)診療施設の安全管理と教育訓練

     獣医療法施行規則では、放射線障害防止のための安全管理体制を確立するために、放射線障害防止に関わる監督を行う者や予防規程及び研修・教育訓練について記述している。

    1)放射線障害防止に関わる監督を行う者(規則第7条)

      診療施設の管理者には、診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する場合は放射線障害防止について監督させるため、放射線障害防止法第35条第2項に規定されている第1種放射線取扱主任者免状を有する獣医師を専ら管理・監督業務にあたらせることが義務付けられている。
     放射線障害防止法の第34条の規定では、非密封の放射性物質を使用する場合は放射線障害の防止を監督するため、第1種放射線取扱主任者を配置することとしている。
     薬事法の規定に基づき、製造販売の承認を受けた放射性医薬品である診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する場合に限定すれば、放射線障害防止法の適用外であるが、今回の獣医療法施行規則の改正により初めて獣医診療に限定して獣医師の使用が認められ、使用する施設においては放射線障害防止の監督を行う者に関連法規に加え、放射性同位元素の取扱いや獣医診療の知識を有している第1種放射線取扱主任者免状を有する獣医師を配し、放射線防護及び安全使用の管理に専ら専従することとしている。
     ただし、放射線障害防止法下で、診療用高エネルギー放射線発生装置(リニアック装置)を使用している施設においては、放射線障害防止法第12条の8の特定許可使用者として、第1種放射線取扱主任者を配置している場合には、この者を診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用同位元素を使用する監督者として差し支えないとしている。
     また、診療施設において放射線障害防止の安全管理体制の運用を客観的に評価するためには、監督する者と別の者による実施できるチェック機構を確立しておくこととしている。

    2)放射線障害の予防のための規定(規則第7条の2)

      診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えた診療施設の管理者は、診療業務を開始する前に農林水産大臣の告示で定める事項に基づき、放射線障害予防のための規程を作成しなければならない。

      農林水産大臣の定める事項とは、

      1. 診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱いに従事する者に関する職務及び組織に関すること。
      2. 放射線取扱主任者、核医学装置の取扱いの安全管理に従事する者に関する職務及び組織に関すること。
      3. 診療用放射性同位元素使用室及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の維持管理に関すること。
      4. 診療用放射性同位元素使用室及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の点検に関すること。
      5. 核医学装置の使用に関すること。
      6. 診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の入手、使用、保管、運搬又は廃棄に関すること。
      7. 放射線の量及び放射性同位元素による汚染状況の測定、並びにその測定の結果に関すること。
      8. 放射線障害を防止するために必要な教育及び訓練に関すること。
      9. 健康診断に関すること。
      10. 放射線障害を受けた者、又は受けるおそれのある者に対する保健上必要な措置に関すること。
      11. 獣医療法施行規則第19条に規定される記帳及び保存に関すること。
      12. 地震、火災、その他の災害が起こったときの緊急時の措置に関すること。
      13. 危険時の措置に関すること。
      14. その他放射線障害の防止に関する必要な事項。

    3)研修及び教育訓練(規則第7条の3)

      診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えた診療施設の管理者は、初めて診療を行う前及び行った後にあっては少なくとも3年ごとに診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事する者であって、管理区域に立入る者(放射線診療従事者等)のうち獣医師に放射線による獣医療に関する研修を受けさせなければならない。
     また、施設の管理者は、診療業務等で管理区域内に立入る獣医師、診療補助者及び専任の清掃者(放射線診療従事者等)に対して、放射線障害を防止するために必要な教育及び訓練を行った場合は、以下の事項を記載し、これを1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間保存しなければならない。
    記載すべき内容は、
    @研修の受講年月日又は教育及び訓練の実施年月日、A研修の受講者又は教育及び訓練を受けた者の氏名、B研修又は教育及び訓練の内容
    • 施設の管理者は、初めて診療を行う前及び行った後にあっては3年を超えない期間毎に、少なくとも1度、担当する獣医師に放射線による獣医療に関する研修を受けさせなければならない。
    • ただし、放射線障害防止法第36条の2の規定により定期講習を受けている獣医師は、当該研修を省略することができる。
    • 研修内容は、放射線関係学会等団体が主催する放射線の安全管理に関する研修等であり、以下の事項を含む講義又は実習について受講すること。
      受講の内容は、
      • 放射線防護に関する関連法規
      • 放射線診療を行う施設の概要
      • 担当獣医師や診療補助者、及び専任の清掃者等の放射線被ばく管理
      • 放射線測定
      • 放射線診療の原理と臨床応用
      • 診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱いと放射線防護
      • 獣医療用放射性汚染物の取扱い
      • 診療用放射性同位元素及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与された飼育動物の取扱い
    • また、診療施設の管理者は、院内等において担当獣医師や診療補助者及び専任の清掃者等(放射線診療従事者等)に対して、行為内容に準じた放射線障害防止のために必要な教育訓練を、1年を越えない期間ごとに実施すること。
      この診療従事者等に対する教育訓練の内容は、
      • 放射線の人体に与える影響
      • 放射線防護に関する関連法規
      • 診療用放射性同位元素の安全な取扱い
      • 放射線障害の予防のための規定
    なお、上記項目について、十分な知識及び技能を有していると認められる者には、当該項目について教育訓練を省略することができること。



(4)放射線診療従事者等の放射線防護(第13条)

     獣医療法施行規則では、診療施設の管理者は放射線診療従事者等の受ける実効線量が次に掲げる値を超えないようにしなければならないとしている
    1. 平成13年4月1日以後、5年ごとに区分した各期間につき100ミリシーベルトを超えないこと。
    2. 4月1日を始期とする1年間につき50ミリシーベルトを超えないこと。
    3. 妊娠する可能性がないと診断された者、妊娠する意思がない旨を診療施設の管理者に書面で申し出た者、及び妊娠していると本人の申出等により診療施設の管理者が妊娠の事実を知った時から出産までの間につき、人体内部に摂取した放射性同位元素からの内部被ばくすることについて1ミリシーベルト以下にする女子の放射線診療従事者等を除く、放射線診療従事者等は、4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする各3月間につき5ミリシーベルト以下にすること。
     獣医療法施行規則では、診療施設の管理者は放射線診療従事者等の受ける等価線量が以下の値を超えないようにしなければならないとしている。
    1. 眼の水晶体は、4月1日を始期とする1年間につき150ミリシーベルトを超えないこと。
    2. 皮膚は、4月1日を始期とする1年間につき500ミリシーベルトを超えないこと。
    3. 妊娠中である女子の腹部表面には、獣医療法施行規則に規定される期間につき2ミリシーベルト以下にすること。
     獣医療法施行規則では、診療施設の管理者は放射線障害を防止するための緊急を要する作業を行うときは、当該作業を行う放射線診療従事者等(女子は、妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を管理者に書面で申し出た者に限る)については、上述した限度を超えて作業に従事することができる。
     ただし、緊急作業に従事する間に受ける実効線量は100ミリシーベルト、眼の水晶体の等価線量は300ミリシーベルト、皮膚の等価線量は1,000ミリシーベルトを超えないこととしている。
     なお、局長通知では、
    • 18歳未満の者は、放射線診療装置等の取扱いをさせてはならないと規定している。
    • 原則として、放射線診療従事者等以外の者を管理区域に立入らせてはならない。
    • 諸般の事情で、放射線診療従事者以外の者を、管理区域内に立入らせる場合には実効線量が1週間につき100マイクロシーベルトを超えるおそれのある場合は、その者に線量測定を行う必要がある。
    • 実効線量とは、外部被ばく及び内部被ばくを合算したものである。




Go Back  2/3  Go Next