(1)一般的注意事項
ア 馬や牛などの大動物のX 線撮影は、通常、動物を立たせた状態で行います。動物を十分にコントロールできない場合には、鎮静剤や麻酔剤を用いた保定が必要でしょう。特に子牛の場合、ロープによる外傷を防ぐためにも、医薬品を用いた保定が有効です。
イ 大動物のX 線撮影は屋外で行われることもありますが、十字照明が見えにくく、診断に適する写真を得られない場合もあるので、動物が落ち着ける屋内の場所での撮影が望ましいです。
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(2)X 線使用施設、管理区域、標識、注意事項の掲示、警告灯
ア 大動物専用のX 線診療室がある場合には、小動物のX 線診療室と管理区域の項目を参照して下さい。
イ 往診等で、畜舎内や屋外でX 線撮影を行う場合には、一時的な管理区域を設定する必要があります。X 線ビームを向ける方向に、X 線を完全に遮へいできる比較的厚いコンクリート壁があることが望ましいです。また、立入を制限するために目立つ色のテープやロープで管理区域を設定します。区域の設定には、X 線管の焦点から3m 以上の距離を確保することが大切です。なお、安全確保のために、X 線装置を扱う者が管理区域全体を見渡せるようにする必要があります。
ウ X 線ビーム方向に遮へい壁がない場合には、2mm 厚以上の鉛板をカセットの裏に設置することで遮へいすることができますが、十字照明によってカセットの面積以下にX 線ビームを制限することが必要です。
エ 一時的な管理区域にも標識は必要なので、往診が多い獣医師は必要な表示を行えるように準備しておくと良いでしょう。標識、注意事項の掲示及び警告灯については、小動物のX 線撮影を参照して下さい。
オ 一時的な管理区域を設定する場合には、関係者以外の者が近づかないように表示することが必要です。
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附属資料3 標識や警告の例
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(3)院内規則の制定と教育訓練
大動物のX 線撮影を行う場合にも、放射線防護の観点から、院内規則の制定と教育訓練は必要です。特に、大動物のX 線撮影の際に、やむを得ず飼い主などに保定の補助等を依頼する場合には、放射線防護に必要な内容をわかりやすく記述した書面を準備しておくと良いでしょう。
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労働安全衛生法第59条3項
II - 7 教育訓練 |
(4)X 線装置
小動物の同じ項目を参照して下さい。
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(5)X 線装置の附属装置及び関連機器等
ア 小動物の同じ項目を参照して下さい。
イ 成牛の撮影では、カセットを保持する者の身体の一部にX 線ビームが照射されないようにカセットホルダーを使用します。しかし、馬の撮影では通常カセットホルダーが使えないので、馬からの危害が生じないように注意しながら、厚い鉛を含む手袋等の使用によりX 線防護を行いますが、大きめのカセットとフィルムを使って照射野を狭く設定し、さらに鉛入手袋を使用すると良いでしょう。
ウ 未使用あるいは撮影済みのX 線フィルムやイメージングプレートは、X 線撮影している場所から十分に離れた場所に置くか、遮へいされた箱に入れておきましょう。
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