放射線防護技術編
獣医療における放射線防護の基礎知識
3.小動物のX線撮影 参考ムービーはこちら

(1)X 線診療室と管理区域

    ア 管理区域は、X 線診療室を超えた広い区域として指定するのではなく、X 線診療室の隔壁(天井、床、ドアを含む)の外周を指定する方が合理的です。
     診療施設の管理者は、管理区域の境界にその旨を示す標識を付け、最も高い実効線量となる境界においても、3ヵ月間に1.3mSvを超えないように管理しなければなりません。
     小動物のX 線撮影では、X 線ビームを床の方向に向ける撮影が一般的なので、X 線診療室の階下に居室がある場合には、床(天井)の厚さがコンクリートなら150mm 以上、それ以外の材料の場合には2mm 鉛当量以上の構造とすることが必要です。この場合の遮へいは、コリメーターを全開にした場合のX 線ビームの床における面積を超える必要があります。また、透視装置などで階上に向けてX 線ビームを使用する場合にも、階上に対して同様の配慮をしなければなりません。
     X 線撮影の回数が多い場合には、壁の遮へい能力などについて、放射線防護に詳しい者の助言を受けるべきでしょう。
    イ X 線診療室の中で人が常時立ち入る場所については、適切な遮へいによって実効線量を1週間につき1mSv 以下にする義務があります。 散乱線の遮へいには、0.5mm 鉛当量で十分ですが、直接放射線では2mm 鉛当量以上の遮へいが必要となります。
    ウ 小動物の通常のX 線撮影では、水平方向ビームを使用することは少ないのですが、そのような撮影を行う場合には、照射方向に人がいないことを確認し、さらに管理区域境界における実効線量を十分に考慮しなければなりません。
    エ X 線診療室の隔壁やドアの構造設計では、遮へいなど放射線防護に詳しい者の助言を受けるべきでしょう。

参考資料3 放射線の測定
(X線使用室と管理区域境界
が一致するケースを想定)
獣医療法施行規則第11条









獣医療法施行規則第7条
II - 表1 放射線防護用具の
用途と種類

(2)標識、注意事項の掲示、警告灯

    ア X 線診療室の入り口には、X 線診療室であることに加え、院長等の許可がなければ立ち入れないことを明記した標識を付ける必要があります。
    イ 管理区域の境界には、その旨を記した標識を付ける義務があります。管理区域とX 線診療室が一致している場合には、X 線診療室の標識と並べて貼ってもかまいません。
    ウ X 線診療室の中の目につきやすい場所に、放射線障害の防止に必要な注意事項を掲示しなければなりません。
    エ X 線診療室の入り口に、X 線装置に電源が入っている際に点灯する警告表示(赤いランプで三つ葉マークやX 線照射中などの表示)を配置します。この警告灯は自動で点灯するものが望ましいでしょう。


I - 附属資料3
標識や警告の例





I - 附属資料2
注意事項の記載例

(3)院内規則の制定と教育訓練

    ア 診療施設の管理者は、X 線診療に関連する放射線障害を防止するために必要な事項をまとめた院内規則を制定し、放射線診療従事者等に周知すべきです。また、管理区域へ一時的に立ち入る者に対しては、放射線被ばく低減に必要な注意事項等を簡潔に記したシートを作成し、現場に備えておきましょう。
    イ 職員が管理区域に立ち入ることになる際、及び継続して管理区域に立ち入る者に対しては1年を超えない時期に1回ずつ放射線障害を防止するための教育訓練を実施すべきです。教育訓練では、関係法令と院内規則、及び放射線障害防止に関わる内容について研修しましょう。
    ウ 診療施設の管理者は、X 線装置の管理担当者を指名し、装置の管理を行わせ、定期的な報告を義務づけるようにしましょう。 次のページへ



I - 附属資料4
飼い主等が管理区域内
に入る時の同意書の例


労働安全衛生法第59条3項
II - 7 教育訓練


Go Back  1/4  Go Next